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こんにちは。
兵庫県西宮市仁川町2ー4ー13で歯医者をしている、しらやま歯科クリニックの白山です。
虫歯を治したり、子供の矯正をしたりしています。
皆さんは異常嚥下という単語をご存じでしょうか?
嚥下というのは、何かを飲み込むことなのですが、それがうまくいかないことを異常嚥下といいます。
今回はその異常嚥下について、解説していきます。
それでは本編です。
異常嚥下(いじょうえんげ)とは、正常な飲み込みの機能(嚥下)が適切に行われない状態を指します。嚥下は、食物や飲み物を口から胃に送るために行われる重要な生理的な過程です。正常な嚥下では、舌、唇、顎、咽頭、食道などが協調して働き、食物が円滑に通過しますが、異常嚥下ではその過程に問題が生じます。異常嚥下は、食物が誤って気管に入ったり、飲み込みにくさや痛みを伴うことがあり、食事をすることが困難になったり、健康に悪影響を及ぼしたりすることがあります。
本稿では、異常嚥下の定義やその原因、症状、診断方法、治療方法、そして異常嚥下が引き起こす可能性のある健康問題について詳しく解説します。
嚥下は、以下の3つの段階から成り立っています:
口腔期(第一期)
食物を口に入れて、噛んで細かくし、舌の上でまとめます。これを「食塊」と呼びます。
舌は食塊を上顎に押し付けて、咽頭に送り込みます。
咽頭期(第二期)
食塊が咽頭に到達すると、咽頭の筋肉が収縮して食物を食道に押し込むとともに、気管を防御するために喉頭が上昇し、声門が閉じます。これにより、食物が気管に入るのを防ぎます。
食道期(第三期)
食物が食道に入ると、食道の筋肉(蠕動運動)が食物を胃に向かって送ります。
異常嚥下は、このいずれかの段階で問題が発生することによって生じます。問題が発生すると、食物が誤って気管に入る誤嚥や、嚥下困難(ディスファジア)などの症状が現れることがあります。
異常嚥下はさまざまな原因によって引き起こされます。これには解剖学的要因、筋肉の異常、神経の障害、病気などが含まれます。以下に、異常嚥下の原因として考えられるいくつかの要因を挙げます。
口腔の構造的異常:口腔内に異常があると、食物が正常に嚥下できなくなることがあります。例えば、上顎や下顎の発育が不十分な場合、歯並びや噛み合わせが悪い場合には、食物をうまく噛むことができず、嚥下に問題が生じます。また、口蓋裂などの先天的な異常も嚥下に影響を与えることがあります。
喉頭や咽頭の異常:喉頭(声帯)や咽頭の構造に問題がある場合、嚥下の際に食物が気管に入るリスクが増加します。咽頭が狭い場合や、嚥下に関わる筋肉が正常に働かない場合も嚥下に問題が生じます。
舌の筋力低下:舌の筋力が弱くなると、食物を適切にまとめて咽頭に送ることができなくなります。これは、神経や筋肉に関連する疾患、例えば筋萎縮性側索硬化症(ALS)やパーキンソン病、脳卒中後の後遺症などによって引き起こされることがあります。
嚥下を制御する神経の障害:嚥下は複数の神経の協調によって行われます。脳や脊髄からの信号が正常に伝わらない場合、食物を適切に飲み込むことができません。神経障害には、脳卒中や脳性麻痺、頭部外傷、アルツハイマー病などが含まれます。
加齢に伴って、嚥下機能は自然に低下することがあります。老化により、舌や喉の筋肉の強度が低下したり、唾液の分泌が減少したりすることがあります。これにより、食物が適切に喉に送られず、飲み込みが困難になることがあります。
神経疾患:パーキンソン病や脳卒中、ALS(筋萎縮性側索硬化症)などの神経疾患は、嚥下機能に深刻な影響を及ぼすことがあります。これらの病気は、嚥下に関わる筋肉の動きを制御する神経に障害を与えます。
筋肉疾患:筋ジストロフィーや重症筋無力症などの筋肉に関わる疾患も、嚥下機能に影響を及ぼす可能性があります。
消化器疾患:逆流性食道炎や食道狭窄などの疾患は、食道の通過を妨げ、嚥下障害を引き起こすことがあります。
心理的なストレスや不安、摂食障害(例えば、神経性無食欲症や過食症)なども嚥下に影響を与えることがあります。精神的な問題が原因で、食べ物を飲み込むことができなくなることがあります。このような状態では、実際に嚥下が困難であるか、単に飲み込みたくないという感情的な障害が関与する場合があります。
異常嚥下の症状は、原因や重症度によって異なりますが、一般的に以下のような症状が見られます。
嚥下困難は、最も一般的な異常嚥下の症状です。食物や液体を飲み込む際に痛みや不快感を感じたり、喉に食物が引っかかるように感じたりすることがあります。また、嚥下に時間がかかる場合や、食物が喉の中で動かないような感覚を覚えることもあります。
誤嚥は、食物や液体が気管に入る状態を指します。これにより、喉の奥でむせる、咳が出る、または呼吸困難を感じることがあります。誤嚥が繰り返されると、誤嚥性肺炎などの感染症を引き起こす可能性があり、健康に重大な影響を与えることがあります。
食事中に食物や飲み物を飲み込んだ際にむせることがあります。むせることが頻繁に起こる場合は、嚥下機能に異常がある可能性があります。
嚥下に困難を感じることから、食事が十分に摂れなくなり、体重が減少することがあります。また、食事を避けるようになると、栄養不足や脱水症状を引き起こすことがあります。
異常嚥下を診断するためには、以下のような手法が用いられます。
患者の症状や病歴を確認し、嚥下の問題がどのように発生しているかを評価します。特に、食事中のむせや喉の痛み、誤嚥の頻度などが重要な情報となります。
嚥下造影は、食物を飲み込んだ際にX線を使ってその過程を観察する方法です。バリウムを含む液体を飲み込ませ、その動きをX線で追いながら、異常があるかどうかを確認します。
内視鏡を使用して、喉や食道の内部を直接観察します。これにより、食道の狭窄や異物の存在、腫瘍などがないかを確認することができます。
嚥下に関与する筋肉や神経の機能を評価するため、さまざまな嚥下機能検査が行われます。これにより、嚥下に関わる筋肉の強さや神経の反応などを評価することができます。
異常嚥下の治療方法は、原因や症状に応じて異なります。以下は、主な治療法です。
嚥下訓練は、異常嚥下の最も一般的な治療法の一つです。嚥下訓練では、舌や喉の筋肉を強化し、嚥下を正常に戻すことを目指します。リハビリテーションの一環として、筋力トレーニングや、嚥下の動作を繰り返すことが行われます。
薬物治療は、神経や筋肉の異常が原因である場合に使用されることがあります。神経伝達物質を調整する薬物や、筋肉を強化する薬が使われることがあります。
嚥下に関わる構造的な問題がある場合、手術によってその問題を解決することがあります。例えば、食道狭窄や腫瘍が原因の場合、手術で解決することが可能です。
嚥下困難によって食事が取れない場合、経口摂取が難しくなることがあります。その場合、栄養補助食品や経管栄養(胃ろうや経鼻チューブ)などが必要になることもあります。
異常嚥下は、さまざまな原因によって引き起こされる嚥下の障害です。口腔や咽頭、食道の問題だけでなく、神経や筋肉の異常が関与していることもあります。異常嚥下を放置しておくと、誤嚥性肺炎や栄養失調など、健康に深刻な影響を与えることがあります。異常嚥下の治療には、嚥下訓練や薬物療法、手術などがあり、原因に応じた適切な治療を行うことが重要です。早期に診断し、適切な治療を受けることが、嚥下機能の回復や改善につながります。