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こんにちは。
兵庫県西宮市仁川町2ー4ー13で歯医者をしている、しらやま歯科クリニックの白山です。
虫歯を治したり、こどもの矯正をしたりしています。
さて、今回は小児矯正に関してです。
特にその中でもMFTについて解説します。
MFT(Myofunctional Therapy:口腔筋機能療法)は、舌、唇、頬、顔面の筋肉の正しい機能や位置を獲得・維持することを目的としたトレーニング療法です。歯科矯正とセットで行われることで、矯正治療の効果を高め、後戻りのリスクを抑えるために重要な役割を果たします。
MFTは、まず口腔筋機能の評価からスタートします。歯列や顎の位置だけではなく、以下のような機能面を詳しくチェックします。
舌の位置:安静時の舌のポジション(上顎に触れているか、下顎に落ちているかなど)
嚥下(えんげ)のパターン:舌が前に出る癖(舌突出癖)がないか
呼吸様式:口呼吸か鼻呼吸か
発音の特徴:舌足らずな発音(舌の位置が原因でサ行が言いづらい等)
顔面筋のバランス:唇や頬の筋力バランス
この評価は歯科医師やMFTトレーナー、場合によっては言語聴覚士が行い、MFTが必要かどうかを判断します。
評価の結果をもとに、以下のような個別目標が設定されます。
正しい舌の位置の習得
鼻呼吸の促進
嚥下の改善
唇や頬の筋力強化
不良習癖(口唇癖・舌癖・指しゃぶりなど)の除去
そのうえで、年齢や口腔機能の発達段階に応じたトレーニングプログラムが作成されます。
MFTのトレーニングは、歯科医院での定期指導と、自宅でのセルフトレーニングが組み合わされて行われます。トレーニングの内容は大きく分けて次の5つです。
舌先を上顎にしっかり当てる練習
唇を閉じてリラックスした状態を保つ訓練
口テープを使った鼻呼吸トレーニング
呼吸筋(特に横隔膜)のエクササイズ
正しい嚥下時の舌の動きを体得する練習(スワロートレーニング)
舌が前方に押し出される癖(舌突出癖)を改善する訓練
舌の上下左右の可動域を広げる体操
唇をすぼめてキープするトレーニング
頬の筋肉を使った風船膨らまし・吸う・押す等の練習
指しゃぶり、唇噛み、舌のクセなどを認識し、置き換える行動療法
特に小児矯正において重要視されるポイント
週に1回または月に数回の通院+毎日数分の自宅トレーニングが基本です。
MFTは単独で行う場合もありますが、歯科矯正治療と連携して行われることが多いです。たとえば:
矯正器具(ブラケットやマウスピース)装着前の筋機能の調整
矯正中の筋肉の再教育
矯正治療後の後戻り防止のサポート
MFTを行うことで、舌や唇の力で歯並びが崩れるリスクを減らすことができます。
MFTは短期間で効果が出るものではありません。習慣の変化を伴うため、長期的なフォローアップが必要です。
最低3ヶ月~6ヶ月以上継続が推奨される
トレーニングが正しく習慣化されているかを定期的にチェック
保定期間(矯正終了後)中の定期的トレーニング継続
MFTをやめてしまうと、舌や口唇の悪習癖が再発し、矯正の「後戻り」が起こる可能性があります。
矯正治療では歯を正しい位置に動かしますが、その原因となっていた筋機能が改善されなければ再び歯は動いてしまうというのが実情です。
舌で前歯を押す癖 → 出っ歯が戻る
口呼吸 → 顎の発育不足
舌の低位 → 上顎の狭窄
これらを根本から解決するためにMFTが必要です。
特に、以下のようなケースではMFTの併用が非常に効果的です:
開咬(上下の前歯が噛み合わない)
出っ歯(上顎前突)
叢生(歯のガタガタ)
舌癖や口呼吸のある小児
ステップ | 内容 |
---|---|
1. 評価 | 舌・唇・呼吸などの機能診断 |
2. 計画 | 個別トレーニング計画の立案 |
3. 実践 | 舌・唇・呼吸・嚥下の訓練 |
4. 連携 | 矯正治療との併用と進行管理 |
5. 維持 | 習慣化・再発防止のフォロー |
MFTは「歯並びの土台づくり」とも言えます。矯正治療を成功させるためには、見えない部分(機能)へのアプローチが不可欠であり、MFTはその役割を担う非常に大切なプロセスです。