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こんにちは。
兵庫県西宮市仁川町2ー4ー13で歯医者をしている、しらやま歯科クリニックの白山です。
虫歯を治したり、こどもの矯正をしたりしています。
今回は歯周病に関して考えてみようと思います。
どうやら最近の研究で、歯周病と認知症が関係あるという話がありました。
そこに関して、考察していきましょう。
近年、口腔の健康と全身の健康との関係がさまざまな分野で注目されるようになってきました。特に歯周病と認知症の関係性については、多くの研究が進んでおり、「歯の健康が脳の健康を守る」可能性が示されています。
歯周病は、歯と歯茎の境目に細菌(プラーク)がたまり、炎症が起きることで始まる病気です。放置すると、歯を支える骨(歯槽骨)が破壊され、最終的には歯が抜け落ちてしまうこともあります。
初期は「歯肉炎」:歯茎の腫れや出血
進行すると「歯周炎」:歯槽骨の吸収、歯の動揺
ほとんど痛みがないまま進行する「サイレントディジーズ」
成人の約80%が罹患しているとされる(日本人の国民病)
認知症は、記憶・判断・理解などの認知機能が低下し、日常生活に支障をきたす疾患の総称です。原因疾患の中で最も多いのがアルツハイマー型認知症で、全体の約60〜70%を占めます。
アルツハイマー型認知症:脳内に「アミロイドβ」や「タウタンパク」が蓄積
血管性認知症:脳梗塞・脳出血などが原因
レビー小体型認知症:幻視や運動障害を伴う
前頭側頭型認知症:人格変化や行動障害が目立つ
最近の研究では、歯周病が認知症のリスク因子となる可能性があることが次々と報告されています。
東京都健康長寿医療センターの研究では、20本未満の歯しかない人は、20本以上ある人に比べて認知症リスクが約1.9倍高いという報告があります。
米国の大規模調査(NHANES)では、重度の歯周病患者は認知機能が低下している傾向があると判明。
アルツハイマー病患者の脳内から歯周病菌「ポルフィロモナス・ジンジバリス(P. gingivalis)」のDNAや毒素が検出されている。
歯周病菌が出す「ジンジパイン」という酵素が、脳内の神経細胞を破壊したり、アミロイドβの蓄積を促進する働きがあるとされる。
歯周病は慢性炎症性疾患です。歯周病によって産生される炎症性サイトカイン(IL-1、IL-6、TNF-αなど)が血流を通じて全身に拡散し、脳にも届きます。
→ これにより、脳内で慢性炎症が誘発され、神経細胞がダメージを受けやすくなるのです。
炎症物質や細菌が血流に乗って脳に到達することで、脳のバリア機能(血液脳関門)が壊れやすくなり、異物が脳に侵入しやすくなります。
→ これがアルツハイマー病における病理変化(アミロイドβの蓄積など)を促進する要因とされています。
炎症や毒素により神経伝達物質の合成・分解のバランスが乱れ、記憶や学習を司る海馬の機能が低下する可能性が示唆されています。
歯が少なくなると、食事が偏りやすくなり、栄養不足や咀嚼刺激の低下が起こります。これも認知症のリスクを高める要因です。
咀嚼は、脳の海馬や前頭前野を活性化することが知られています。
入れ歯を装着している人が咀嚼回数を増やすと、認知機能が改善した例も報告されています。
認知症になると、セルフケア能力の低下により歯磨きや口腔清掃が不十分になり、歯周病が進行しやすくなります。
歯磨きを忘れる・理解できない
義歯の取り扱いが困難
通院が難しくなることで、歯科受診の機会も減少
このように、歯周病と認知症は双方向に悪影響を及ぼす関係にあるのです。
定期的な歯科検診(3~6か月ごと)
毎日の正しい歯磨き、歯間ブラシやフロスの使用
歯科衛生士によるプロフェッショナルケア(PMTC)
歯の本数を保つこと(20本以上を維持することが目標)
家族や介護者による補助的なブラッシング
口腔内の乾燥を防ぐ保湿ジェルや洗口剤の使用
歯科医師・介護職・医師が連携する「多職種チームケア」
歯周病菌と認知症の関係性を証明するために、世界中の研究者が注目しています。近年では、
歯周病菌のワクチン開発
歯周病治療が認知機能低下を予防できるかの臨床試験
AIや画像解析による口腔と脳の関連分析
なども進められており、将来的には「口腔ケアが認知症治療の一翼を担う」時代が来るかもしれません。
歯周病が与える影響 | 認知症に与える影響 |
---|---|
慢性炎症が脳へ波及 | 神経細胞の機能低下 |
細菌毒素が脳に侵入 | アミロイドβの蓄積促進 |
咀嚼刺激の減少 | 脳の活性低下 |
歯の喪失 → 栄養障害 | 認知機能の悪化 |
歯の健康は、脳の健康とつながっています。
特に高齢化社会においては、「歯を守ること」が「心を守ること」に直結しているとも言えます。
今後も歯科医療が、認知症予防の柱の一つとなることが期待されています。