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こんにちは。
兵庫県西宮市仁川町2ー4ー13で歯医者をしている、しらやま歯科クリニックの白山です。
虫歯を治したり、こどもの矯正をしたりしています。
さて、今回は喫煙に関してです。
歯科と喫煙の関係について考えてみましょう。
喫煙は、全身の健康に悪影響を与えることで知られていますが、口腔内に対しても深刻な悪影響を及ぼすことが多数の研究から明らかになっています。歯科の現場では、虫歯や歯周病、インプラント治療など多くの場面で喫煙が問題になります。
喫煙者は非喫煙者に比べて、2〜6倍歯周病にかかるリスクが高いとされています。これは以下のような理由によります。
免疫力の低下:喫煙により白血球の機能が低下し、細菌に対抗しづらくなる
血流障害:歯茎への酸素・栄養供給が悪化し、組織の再生力が低下
炎症の隠蔽:ニコチンが血管を収縮させ、出血や腫れなどの症状が出にくくなり、病気の発見が遅れる
歯周病は「サイレントディジーズ(静かなる病気)」とも呼ばれますが、喫煙者ではその傾向がさらに強くなります。
喫煙は唾液の分泌を抑制し、口腔内が乾燥しやすくなります。唾液には自浄作用や抗菌作用があるため、その量が減ると虫歯ができやすくなります。
また、タバコのタールが歯の表面に付着することでプラーク(歯垢)や歯石が付きやすくなり、虫歯菌の温床になります。
喫煙は強い口臭を引き起こします。これは単にタバコの臭いだけでなく、以下のような複合的な要因によります。
唾液の減少 → 細菌が繁殖しやすくなる
歯周病 → 炎症性物質による不快な臭い
タールの蓄積 → においを吸着しやすい
本人は慣れてしまって気づかないことも多く、周囲に不快感を与えることがあります。
喫煙者においては、インプラント治療の成功率が著しく低下することが多くの研究で明らかにされています。
インプラント周囲炎のリスクが高くなる
骨とインプラントの結合(オッセオインテグレーション)が阻害される
治療後の感染リスクが高い
このため、インプラント治療を希望する場合には、禁煙が必須条件とされることもあります。
喫煙によって歯や歯茎に以下のような審美的な変化が生じます。
歯の着色(ヤニ汚れ):タールによる黄ばみ・黒ずみ
歯茎の黒ずみ(メラニン沈着):特に女性の美意識に影響
口唇のくすみ・シワ
これらはホワイトニングやクリーニングである程度改善できますが、根本原因を断たなければ繰り返します。
喫煙者は、歯肉の治癒能力が低く、外科処置後の回復が遅いことが分かっています。
抜歯後の治癒遅延(ドライソケットのリスク増加)
歯周外科手術後の治癒不良
矯正治療中の骨代謝への影響(歯の移動が遅い、または過剰)
このため、喫煙者に対しては歯科治療のプランを慎重に立てる必要があります。
現在、多くの歯科医院では「タバコは歯と歯茎の敵」という観点から、患者に禁煙指導を行う取り組みが進められています。
禁煙ポスター・リーフレットの掲示
定期健診時に喫煙歴を聞き、リスク説明
医科との連携(禁煙外来への紹介)
歯科は患者と継続的に関わる機会が多いため、禁煙支援の第一線として重要な役割を担っているのです。
家庭内での受動喫煙は、子どもの虫歯や歯肉炎のリスクを高めることが分かっています。
親の喫煙による虫歯菌の感染
口腔乾燥、歯垢の増加
鼻炎やアレルギー性疾患の誘発 → 口呼吸 → 歯列不正
小児矯正や口腔育成の観点からも、家庭での禁煙は重要です。
「電子タバコ(VAPE)」や「加熱式タバコ(IQOSなど)」は、従来の紙巻タバコに比べて「安全」と誤解されがちですが、歯科的には依然としてリスクがあります。
ニコチン含有量がある場合、血管収縮などの作用は変わらない
粘膜の刺激や炎症、口腔乾燥の原因になりうる
臨床的に長期的影響のデータが不足している
特にインプラントや外科処置を受ける患者には、電子タバコも含めた禁煙指導が必要です。
歯科医院は、患者の健康を口腔から支える場であり、禁煙支援の第一歩にもなります。具体的な取り組みとしては:
動機づけ面接(MI):喫煙の害と患者自身の目標を一致させる
COモニター測定:呼気中一酸化炭素を測定し、数値で喫煙の影響を可視化
行動療法的アプローチ:トリガーとなる行動の把握と置き換え
歯科衛生士やスタッフとチームで取り組むことで、患者の「歯を守るための禁煙」に導くことが可能になります。
喫煙は、口腔の健康に対して次のような多面的な悪影響を与えます:
歯周病の進行・治療の妨げ
インプラントの失敗リスク増加
虫歯や口臭、審美面の悪化
外科治療の予後不良
歯科医療従事者は、単なる治療の提供者ではなく、患者の生活習慣に働きかける予防医療の担い手でもあります。喫煙の害を正しく伝え、禁煙の動機づけを行いながら、患者とともに健康を目指す姿勢が求められます。
喫煙による口腔環境の悪化は、見た目や機能の問題だけでなく、全身の健康にも波及する重大な問題です。歯科の立場から積極的に禁煙支援を行うことは、患者の生活の質(QOL)向上に直結すると言えるでしょう。