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こんにちは。
兵庫県西宮市仁川町2ー4ー13で歯医者をしている、しらやま歯科クリニックの白山です。
虫歯を治したり、こどもの矯正をしたりしています。
今回は矯正などで用いる基準となる平面の一つ、カンペル平面について、考えようと思います。
カンペル平面(Camper’s plane)とは、歯科補綴(とくに総義歯製作)などで基準となる顔面の水平面のひとつです。英語では “Camper’s line” とも呼ばれます。
耳珠上縁(または外耳道の上縁)から鼻翼下端を結んだ線(平面)
この線は、咀嚼筋群や顔面の解剖的構造と調和がとれており、上下顎義歯の排列や咬合平面の設定において非常に重要な基準面として利用されます。
カンペル平面は、次のような解剖学的ランドマークを結んでいます。
解剖学的構造 | 場所 |
---|---|
耳珠(じじゅ) | 耳の穴(外耳道)の前にある小突起 |
鼻翼下端 | 鼻の横、いわゆる「小鼻」の下の端 |
具体的には:
側頭骨にある外耳道(耳珠上縁)
上顎骨にある鼻翼下端
これらを結んでできる線は、顔面における「おおよその水平面」に相当し、咬合平面(咬み合わせの面)を設定する際のガイドになります。
特に**総義歯(フルデンチャー)**の製作や、**咬合高径(噛み合わせの高さ)**を設定する際に、カンペル平面は非常に重要な役割を果たします。
無歯顎患者(歯が一本もない患者)では、口腔内に咬合平面の明確な基準が存在しません。そこで、顔面の外部から観察可能な「カンペル平面」が、咬合平面の方向を決めるガイドとして活用されます。
上顎咬合堤(人工歯を並べる部位)がカンペル平面と平行になるように設定
正常な咀嚼運動や発音、顔貌の回復につながる
咬合高径とは、上下の顎の垂直的な距離を指します。これが低すぎても高すぎても、次のような問題が生じます:
発音障害(サ行・タ行の不明瞭化)
顔貌の不自然さ(しわの増加、口元の陥没)
顎関節症状
カンペル平面は、咬合高径を設定する際の見た目のバランス(顔の1/3ずつの分割)や、人工歯の排列において顔貌と調和を取るための水平ガイドとなります。
外耳道上縁と眼窩下縁を結んだ線
頭部X線写真(セファロ分析)などで用いられる標準的な頭蓋水平面
カンペル平面は臨床的(義歯など)
フランクフルト平面は画像診断や矯正での分析用
ただし、両者はおおよそ平行しているため、互いに代用的に用いられることもあります。
上顎義歯の咬合堤作製時の水平確認
顔貌分析時の基準線
咬合器(咀嚼運動再現装置)へのフェイスボウ転写時
矯正治療での顎骨位置推定
耳珠や鼻翼の位置は個人差が大きいため、完全な水平面とは限らない
高齢者では軟部組織がたるんでいるため、基準点が不明瞭なこともある
実際の咬合平面とは若干ずれていることもあるため、機能面とのバランスをとる必要がある
歯学部や歯科衛生士養成課程では、総義歯製作の基礎として、カンペル平面の設定・確認が必ず指導されます。
総義歯のワックス咬合堤製作
咬合器への正しいフェイスボウ記録
顎運動のシミュレーション
これらの作業において、「カンペル平面に対して平行に人工歯を並べる」ことが基本中の基本とされています。
カンペル平面とは、
「耳珠上縁から鼻翼下端を結んだ、顔面における基準的な水平線(平面)」
のことです。
目的 | 内容 |
---|---|
総義歯製作 | 咬合平面の方向決定に使用 |
顎顔面分析 | 審美的・機能的な顔貌バランスの評価 |
咬合器使用 | フェイスボウ記録の際の重要基準線 |
臨床的には「完全に正確な水平面」ではありませんが、見た目と機能のバランスを取るために極めて重要なガイドラインです。とくに無歯顎の義歯作りにおいては、患者の顔全体の調和や咀嚼・発音機能の再構築に直結する、基本かつ重要な基準となります。