ブログ
Blog
Blog
こんにちは。
宝塚市の隣、兵庫県西宮市仁川町で歯医者をしている白山です。
虫歯を治したり、子供の歯を治療したり、矯正したりしています。
さて、今回は歯周病と全身疾患についてお話をさせていただきます。
歯周病は日本の成人の約8割がかかっていると言われている感染症です。
単独でも怖い病気です。
何しろ、歯を失う大きな原因になりますから。
でも「歯を失うぐらい、なんてことないよ!」という声が聞こえてきそうです。
歯を失うと大変ですよ!
食事が困難になりますから。
好きなものが食べれなくなるかもしれません…。
人生、おいしいものを食べるのって、幸せの大きな理由ですよね。
歯は本当に大事!
そして、最近では、歯周病は全身疾患との関わりが注目を集めています。
今回はただの歯周病ではなくて、その全身への影響について考えていこうと思います。
これは、デンタルフロスや歯ブラシで、しっかりお口の中を綺麗にして長生きしますか?それとも、サボって早死にしますか?という強烈なメッセージです。
このキーワードで象徴されるように、
歯周病と心内膜炎、狭心症、糖尿病、心筋梗塞、脳梗塞、肺炎、早産、低出生体重児出産などとの関連が
21世期に科学的に証明されています。
現在106種類もの病気との関わりが報告されており
最近では認知症との関連も指摘されるなど年々報告がふえています。
他の病気に影響するということはテレビでも取り上げられることも多いので、
ご存知の人も多いかと思いますが、
まさか認知症にまで影響があるとは意外ではないですか?
主なメカニズムは歯周病に関連した細菌や産生された毒素の直接的な体内への侵入、
歯周炎により発現した炎症性サイトカインによる影響などが考えられています。
炎症性サイトカインとは、歯周病の細菌たちと戦うために私たちの身体が防御反応をおこすことです。
その戦いの結果引き起こされるのは「炎症」です。
戦争の時の爪痕になる「焼野原」のようなイメージで良いと思います。
歯周病が全身疾患と関連する重要なキーワードは、「歯周病の慢性炎症の持続」です。
すなわち、歯周病罹患部位で局所的な炎症が微弱であっても継続することが
全身疾患への影響を与える危険因子になるのです。
具体例をあげると、健康な歯肉溝は7㎠ですが、
中等度から重度の歯周炎罹患部位の歯周ポケット内面の表面積は、
約72㎠で、手のひらサイズの傷口があるのと同じと言われています。
この大きな傷口に24時間うんちと同じ数くらいの細菌がいるプラーク(歯垢)にさらされていることを
想像すると身体に悪そうですよね。
そして、歯周病菌は空気がないところが住処なので歯周ポケットの傷口から
毛細血管を通じて全身に運ばれてしまいます。
膵臓のランゲルハンス島というところで合成、分泌されるインスリンの不足、
またはインスリンの作用不足による持続的な高血糖状態を主徴とする代謝疾患です。
歯周病になると、炎症している歯茎の内側から炎症性物質が血流にのってからだの中に入り込み、
生体が反応してインスリンの働きを低下させてしまいます。
その結果、高血糖になり糖尿病を悪化させてしまいます。
ですので、歯周治療によって糖尿病の値が改善した報告はいくつもあります。
狭心症、心筋梗塞、心臓弁膜症が主な疾患として含まれます。
狭心症は、心臓の筋肉に血液を送る冠動脈が動脈硬化になり、
狭くなって十分な血流が心筋に送れない状態になるものです。
それがさらに進行すると、血流が全く送られなくなって、
心筋が虚血状態に陥って壊死してしまう命に関わる状態が心筋梗塞です。
心臓弁膜症は、心臓の弁膜の開閉がうまくいかず、
心臓から全身へ血液が流れない状態になります。
このように心臓の弁膜に障害のある状態では、
特に血流によって流れ込んだ細菌が弁膜に付着しやすくなり血流が乱れ、
感染性心内膜炎が起こるリスクが増します。
心臓の弁膜で増殖した細菌は、弁膜にイボを作ったり、弁を破壊したり、
全身の感染源や血栓の原因となって生命を脅かします。
脳梗塞とは、脳の細動脈に血栓などが詰まって、
動脈の先の脳に血流が流れなくなって脳細胞が壊死する病気です。
歯周病になると、歯周病細菌が血管内に入り込み、炎症物質が働きます。
白血球などが食べた死骸などが動脈血管内に蓄積し、動脈壁が肥厚してしまい、
動脈の狭窄がおこってしまいます。
その結果、心疾患や脳梗塞が起こります。
動脈硬化病変部を外科手術で取り除いた症例の多数の組織片から歯周病菌が検出されています。
正期産における分娩出産の直前には羊水、胎盤、子宮頸管で炎症性サイトカインの上昇がみられ、
子宮頸管の熟化および子宮筋の収縮が促され分娩が成立します。
しかし、歯周病に罹っている妊婦では、炎症している歯茎の内側から
炎症性物質が血流にのって運ばれてしまいます。
早期に炎症性サイトカインが上昇することにより、早産・低体重児出産に至ることが知られています。
健康な人の場合、異物が気管に入り込むと、むせたり、激しく咳込んで、
その異物を気管の外に排出しようとします。
しかし、高齢者や脳血管疾患などにより咳反射が低下した人の場合は、
この排出が困難になります。
誤嚥の量が多い場合や、誤嚥の量はとりわけ多くなくても、
加齢や風邪や過労で体力を消耗している場合などに免疫能が弱体化し、
身体の抵抗力が低下している場合に肺炎を発症します。
からだの入口はお口です。
健康に保つことでいいことはたくさんあります。
上記で紹介した全身疾患以外にも歯周病と関連する全身疾患はまだまだあります。
しかし、正しい口腔ケアを続けていれば少なくとも歯周病菌が原因で全身の状態を悪化させることや、
健康寿命を縮めてしまうことは防げるのです。
上手に歯を磨ける人でも3ヶ月でポケット内の細菌叢が後戻りすることから、
当院では大人は通常3ヶ月に1回定期検診を行なっていますが、
全身の健康状態、お口の中の状態、歯周病の細菌の状態をみて
定期検診の間隔を先生や私たち衛生士が患者さんごとに合わせた提案をしています。
毎日、診療をしていて感じるのは、
歯周病のことを甘く見ている方が多いということ。
歯のことで心配になる内容は“虫歯”ばっかりで、
「虫歯になっているの!?すぐ治療してほしい!」
という反応はよくあるのですが、
「歯周病になっているの!?すぐ治療してほしい!」
といわれることは、ほとんどありません。
たまにあるのですが、その時は本当に意識が高くすごいなあと感嘆します。
歯を失う理由の多くは歯周病です。
痛くなる多くの理由は虫歯です。
痛いのはもちろん嫌ですが、きちんと体がピンチなことを伝えてくれている合図でもあります。
痛くもかゆくもないのに、こっそり体が悪くなっていくほうが怖くないですか?
歯周病は別名、『サイレント ディジィーズ』(静かな病)といわれており、『サイレント アサシン』(静かな暗殺者)という国もあります。
気づいた時には致命傷ということを避けるために、
日ごろから定期的に歯医者さんで検診はしていきましょうね!